導入インタビュー 川島 章正 様
導入インタビュー
川島 章正 様
interview [Kawashima Akimasa]
川島 章正 様
光岡 紋 様
数々の日本映画の編集に携わり、日本アカデミー賞も数多く受賞されている川島章正様とアシスタントの光岡紋様に、2023年公開予定の映画「親のお金は誰のもの 法定相続人 印」の編集作業にて(株)バイオスよりポータブルSSD 960GBモデルEP29SB3-96001(以下、EP29SB3)を活用頂いた際の印象などを伺いました。
主な作品:
「家族ゲーム」(森田 芳光 1983)
「いつかギラギラする日」(深作 欣二 1992)
「GONIN」(石井 隆 1995)
「愛を乞うひと」(平山 秀幸 1998)
「おくりびと」(滝田 洋二郎 2008)
「蛇にピアス」(蜷川 幸雄 2008)
「ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~」(根岸 吉太郎 2009)
「桜田門外の変」(佐藤 純彌 2010)
「海難1890」(田中 光敏 2015)
川島様
私の映画編集に於けるコンセプトは『世界の映画人が未だやってない新しいアイデアを探す』です。
これは10年前に他界した盟友 森田芳光監督の残した言葉です。この言葉を胸に二人で切磋琢磨し、数々の名作を作ってきました。彼の死後もこの言葉を踏襲して映画作りを続けています。
映画作りはフィルムからデジタルへとツールは変わりましたが、観客を笑わせ、泣かし、感動に導く、という本質的な映画芸術は何も変わりません。今後もデジタル技術を探求し名作を世界中の人たちに届けたいと思っております。
川島様
まず、撮影現場から日々撮影された素材が送られてきます。映画の素材は画と音が別々に送られてきますので編集助手は画に音をワンカットずつ同期させていきます。そのときに必要なのがカチンコです。画のカチンコの合わせ目にカチンコの音をあわせて同期させます。(現在はデジタルカチンコがありますが時々同期がズレるので日本では殆どの人が使っていません)これを「ラッシュ組み」と言います。
「ラッシュ組み」が終わった素材を、監督、メインスタッフ、編集者(以下、エディター)にSNSを使って送ります。エディターは素材を確認後、ラフ編集し、監督に送った後、内容の打ち合わせをします。このシステムの利点は素材の取り忘れや撮り増しを瞬時に判断することが出来るのと技術的な失敗をカバーすることが出来る事です。
編集作業のシステムは2006年より「エディティング・シェア・システム」でおこなっています。これはエディターとアシスタントが、まったく同じ内容の入ったプロジェクトのディスクを持ちSNSを使ってやり取りをします。
「シェア・システム」の利点は編集を進める際に編集データのみをアシスタントに渡しアシスタントは「ラッシュ組み」の終わった素材をエディターに渡します、ですので常に同じ環境が2箇所(何箇所でも可)に存在します。こうすることで、容量がとても大きな映像と音のファイルのやりとりは必要ないですし、私とアシスタントが別々の場所で作業していても同じ状態の素材を見ながらやりとりができます。
また、万が一どちらかのディスクが破損してしまってももう一方に同じものがあるのでバックアップにもなります。今回の「親のお金は誰のもの 法定相続人」でもこのシステムで作業をしました。
光岡様
今回2台利用したのですが、1台は他の部署とのファイルのやりとりに、もう1台は私の作業用ストレージとして使いました。
編集は監督とスクリプターと共に編集室で1ヶ月間おこないます。日々進む編集の状況を録音部や合成部、効果部、作曲家の人たちに映像およびムービーファイルとして書き出し、それを渡して音の作り込みを詰めてもらう、という作業を繰り返します。(その時に渡すのは全体の動画と「aaf」と言われる音のデータです。編集が終わった後、ダビング(MA)までの準備期間にVFXがブラッシュアップしたものが届くので、その都度VFXを入れ込んだ最新の動画を渡します。それは効果音をつける効果部さんに関係があるからです。)
ファイルの容量が大きくネット経由で送るのは得策ではないので普段からポータブルストレージで渡しています。
この作品も編集を重ねて編集ソフトのプロジェクトの情報量が多い中、並行して仮合成やタイトル作成などの作業をして負荷をかけ過ぎたせいか、私が使っていた他社のポータブルのHDDが不安定になりました。
そこでそれまで使っていたポータブルHDDからバイオスEP29SB3に切り替えて使用するためファイルをコピーして、他部署との受け渡しと、私の作業用ストレージとして使うことにしました。
光岡様
実は今までポータブルHDDしか使ったことがなく、今回初めてポータブルSSDを使う機会となりました。とにかくその書き込み、読み書き出しの速さに驚きました。私の作業用ストレージは500GB程のデータを入れて使用していたのですが、それをEP29SB3コピーする際も、HDDよりも何倍も早く終えることができました。
大切なファイルなので作業用ストレージが不安定になった時はとても心配でしたが、想定よりもかなり早くコピーが終わり、不安な時間が少なく精神的にとても助かりました。
コピー後はEP29SB3で編集作業を続行しました。我々2人は同じMacBook Pro 2019 15インチモデルを使用しており、編集はAvid Media Composer、私が仮合成用の映像を作るのにAdobe After Effects、Adobe Photoshopなどを使用しました。
上述のように作業が大詰めの段階で使用する作業用ストレージを取り替えたわけですが、それまでの環境では編集作業を進めていくと終盤にはソフトの操作が重くなったり、Macのレインボーカーソルが回ることもしばしばだったのが、EP29SB3に変えてからはスムーズに作業ができるようになりレスポンスが全く異なりました。
最も負荷のかかるタイミングでSSDの性能の違いを体験することができSSDの性能の良さを改めて体感しました。
川島様
もう1つEP29SB3で良いと感じられたのが専用ケースです。上述のように部署間で何度となく行われるファイルのやりとりにディスクを使うのですが、安全に運ぶにはどうすれば良いのかについて悩むことも多いです。
ディスク購入時に入っていた箱ごと運ぶのもかさばりますし、市販の民生のディスクケースは、当然ですがぴったりとしたサイズにはならず内部で少し動いてしまいます。
持ち運ぶファイルには多くの人が関わっていますし、撮り直しもできません。できるだけ安全に運びたいので、専用ケースでしっかりとカバーされているのは
とても安心感があります。
また、ケースが半透明になっているので、中にメモを入れておけばケースを開けずに内容の確認もできるので、以前のテープの取り回しの良い部分が踏襲されていると思います。
そもそもSSDは駆動部分がないので耐衝撃性が高いですし、EP29SB3は防雨・防塵設計なので、砂漠など過酷な環境の撮影現場での使用でも安心感があるのではと思います。
今回は編集作業の終盤からの使用となりましたが、我々2人だけでなくEP29SB3を渡した他部署の方もその速さや耐久性などを高く評価しているので、次回の作品では我々のシェア・システムでEP29SB3のさらに容量の大きい1.9TBモデルを使いたいと考えています。
川島 章正 様
職種
日本映画 編集技師
主な受賞歴
第22回日本アカデミー賞 編集賞 最優秀賞「愛を乞うひと」
第23回日本アカデミー賞 編集賞 最優秀賞「おくりびと」
第39回日本アカデミー賞 編集賞 優秀賞「海難1890」